「毎日新聞」の購読者として・・・望むこと

就職して、「毎日新聞」を購読するようになった。

 「読売」とか「朝日」など、もちろん熱心に勧誘に来たが、断固として「毎日」にした。

 「毎日新聞」の立ち位置が気に入ったからだ。

 「朝日」ほどリベラル(?)ではないが、少しリベラル。

 それがよかった。

 そして、もう何十年と購読している。

 しかし、コロナ禍の報道で、「?!」と感じた記事があったので、書き記して置きたい。

 

 それは、5月2日と3日の記事だ。

 大阪のコロナ対策の記事で、大阪府の対策と吉村知事の発言を時系列で検証する内容であった。新聞、ジャーナリストとして大いにやってほしい報道であり、今後につながるものとして評価したい。

 しかし、ということは、新聞等メディアの報道や記事の内容も、時系列での検証が必要ではないだろうか。

 府や知事は公的な存在である。一方、新聞等メディアも一般人にすれば、十分公的な存在である。

 

 そこで、新聞記事を検証してみた。

 まず5月2日の記事から

 

 見出しは「再拡大兆候軽視3.1通知」とあり、次の内容であった。

「3月1日、当時の新規感染者数は56人にまで減っていたが、その頃既にリバウンドの兆候があった。・・・一方、宣言解除に伴って医療体制は縮小された。3月1日、府は重症病症の確保数を<215床>から3割減の<150床>まで縮小することを各病院に通知した。当時、重症病症使用率が府の警戒基準(45%)を下回る約40%まで下がっていたこと・・・などが理由だが、この判断が後に大きな影を落とす。

感染拡大で1ヶ月後の31日には各病院に増床を要請したが、一般医療に使っている病症をコロナ用に戻すのは容易でなかった。」

 

 要するに、3月1日の吉村知事の通知が間違っていたと指摘したいわけであるが、3月1日段階で感染者数が56人である。

 それは安心するでしょう。

 今の東京の緊急事態宣言でも解除の目安として厳しい人でも、感染者が100人きったら良いと言っているじゃないですか。

 56人段階で、少し元に戻そうとするのは病院の現状を考えれば当然ではないか。

 事実、「毎日新聞」も、4月11日の記事で、日本の病院の現場のやりくりの大変さを指摘していたではないか。また、4月15日の記事での現場の医師は

 

「年間6000件に上る救急搬送の受入にも影響が及ぶ可能性があり、重症のコロナ患者にも、救急患者にも集中治療室が必要だ。どちらの患者を救えば良いのか、苦悩を深めている」

 

と述べており、その医療現場を知れば、56人までコロナ患者が減れば、一部、一般医療に戻そうとするのは当然の判断だと、この記事を書いた記者は思いませんか?

いや、変異株の大変さを軽視したのだ、という意見もある。しかし、同じ5月2日の記事にこんな内容がある。

 

「日本国内では専門家の間でも感染力の強さについて評価が分かれており・・・、3月に入り、若年層への感染力の強さ、重症化のしやすさ、症状悪化までの期間が短いことなどの特徴が判明。」

 

ということは、3月1日段階では、まだはっきりしていなかったわけだ。

 以上のような状態で、3月1日の通知が誤りだったように示唆する記事は、結果がわかってからの、後出しジャンケンである。そう感じてしまうのは私だけだろうか・・・。

 

 5月3日の記事は、残念なことに、さらにひどい!!

 

見出しは、<吉村知事「マスク会食」提唱後、人手増> <経済傾斜こだわり

その内容を簡単にまとめれば・・・

「飲食店のオーナーが知事に恨み節を言う。それは2月19日に<マスク会食>を提唱したからだ。しかし、不安視する専門家も少なくない。「マスク会食なんか勧めたら、会食していいと言っていると誤解される」、その不安は現実のものとなる、解除後に飲食店の来客数が51%から65%まで回復し、一方、府内の感染者数もじわじわと増え続けた。」

 

 この記事を書いた記者は、文章中に「知事は経済への意識が強い」という内容を4回も記述しており、見出しからわかるように、よほどその姿勢が気に入らないようである。わざわざ、飲食店のオーナーまで引っ張り出して、文句を言わせている。

 もちろん、飲食店が振り回されているのは、大阪だけではないことは言うまでもない。

 それにしても、<マスク会食>を言ったから、飲食店の来客数が51%から65%まで回復した?

 だいたい、若者がテレビを熱心に見ているとも思えないし、総理や小池知事、吉村知事の発言などはっきり言ってそんなに影響がないことは、若者の飲食街などの行動を見ればわかるではない。

 どう読んでも、宣言を解除したから来客数が回復したとしか考えられないのは、私だけだろうか。

 さて、しかし、「ひどい!!」のは、以下のことだ。

 毎日新聞の4月6日の記事に、こうある。

 

見出し「新たな規範に」、その内容は

「<まん延防止措置>について、専門家は効果を上げることの難しさに加え、措置を機に<マスク会食>などを新たな社会規範とする必要性を訴えている。・・・関西福祉大学勝田吉彰教授は、新たなメッセージを出すことに意味がある、何も対策を取らなければ、医療崩壊へまっしぐら、といい、大阪大の大竹文雄教授は、<マスク会食>を新たな社会規範にすることを提案。面倒かもしれないが、慣れてしまえばそれがマナーになる、という。

 

 一体<毎日新聞>はどうなっているんだ。4月6日には<マスク会食>をあらたな社会規範として紹介しておきながら、5月3日には、<マスク会食>なんか誤解のもとだ、という記事を書く。しかも、吉村知事の<マスク会食>発言は、2月19日だ。

 たぶん、書いた記者が違うのだろうが、読む購読者は同じだ。

 結論はこうだ。

 吉村知事に難癖をつけたいから、<マスク会食>をあげつらったんだ。そうとしか、5月3日の記事は読めない。

 

 この記事の問題点はまだある。

 

「吉村知事は大阪市内の飲食店での感染対策をチェックするため、4月5日に<見回り隊>を発足させた。府市町村職員と業者がペアを組む600人態勢とした。ある府職員は<医療崩壊が直面するなか、そこまで人をつぎ込むべき政策なのか。人材の無駄遣いだ」とし、大阪市職員の一人は<現場を知らず、思いつきで先走る。功を急ぎすぎ、裸の王様になっている>とこぼす。」

 

 この記者の吉村知事嫌いも、相当なものだと感じるが、この<見回り隊>の政策は思いつきではないことは、TVのワイドショーでも紹介されている。山梨県の優れた先行例を参考にしたものだ。ただ、大阪という大都市にあうように修正なり、対応の工夫がいるだろうが・・・

 ところで、4月14日の毎日新聞に、こんな記事が載っていた。

 

見出し<2000人専門家が懸念> 記事の内容は

大阪府で新規感染者が1000人を超え、新たなステージに入った。専門家は感染力が強いとされる変異株の影響が大きいと分析し、5日に始まったまん延防止措置の効果が弱ければ、感染者が2000人まで拡大する可能性を指摘している。・・・ただ、実際は感染者の増加スピードは徐々に落ちており、一週間の累計感染者数の前週比は3月末から4月初めにかけて2倍を超えていたが、13日には1.5倍にまで下がっている。高鳥毛教授は<飲食店への見回りなどを始めたことが功を奏している>と見る。・・・また、同教授は<宣言に頼りすぎるのは良くない。保健所の監視員が飲食店に感染対策を指導するなど、きめ細かく質の高い対策を行うべきだ。」

 

 5月3日の記事と4月14日の記事を比べたとき、毎日新聞はどう判断し、何を購読者に分かり易く報道しようとしているのか、モヤモヤが増すばかりだ。

 飲食店への見回りについては、実際に現場の店の人の苦情や一部見守り隊メンバーのいい加減さなどの情報があることは、私も知っている。

 しかし、まん延防止措置にしろ、緊急事態宣言にしろ、お願いや依頼ばかりでは自粛疲れもあり、効果はどんどん薄れている。だから、何か実効性のあるものを求めてやっていることも知っている。

 

 

 

 5月3日の記事を書いた記者は、府の職員や市の職員に取材をしているが、職員にすれば、見回り隊の政策など、<余計なことを>といい迷惑なことだろう。

 <人材の無駄遣い><現場を知らない>

 職員がやりたくなくて文句を言うときの、常套句ではないか。

 記者は、それほど評判の良くない<見守り隊>政策にさらに追い打ちをかけるように取材をもとに記事にしたのだろうが、なぜ、職員に

「では、あなたはどういう政策がいいと思いますか」「どう実行したら効果がでると思いますか」

と取材を深めなかったのか。

 

 失敗の理由だけ集める取材は、うんざりしている。新しい取り組みを何とか実効性があるようにする情報や提言の取材が、ほしい。